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■「焼却」-解説

ある男性が、焼き捨てるべき何某かを携えて川べりの道を歩き、街の外れにひっそりと佇むつぶれかけの焼却場にたどり着きます。その焼却場では、炉まで人が立ち入り、自らものを投げ入れることで 、対象物が本当に焼却されたかどうかを目で確認できることを彼は知っていました。 焼却場の重厚な扉を開けて中に入った彼は、黙々と作業をする従業員の姿に不思議な逞しさを感じるのですが、決して歓迎されてはいない雰囲気も同時に覚えました。一方、炉を覗き込むと、燃え盛る火が妖怪のように濛々とのたうち、あらゆるものを飲み込む自信を湛えて、次の生け贄を待ち構えていました。彼はためらいを覚えながらも、不要になった何某かを 炉に投げ入れ、焼却をあっけなく終えました。
 空虚さを感じる一方、目的の達成に満足した様子で外に出 た彼は、風に吹かれる中で己を省み、そして気付きました。焼き捨てたいと思っていたものは実は彼の頭の中にあり、それらの埋め込まれた記憶までは結局焼き去ることができなかった。 そして、彼は彼の目的が達成されるために何が必要か悟ります。否、それは予め分っていた事でした。彼は焼却という行為から、二者択一の契機に自らが立たされていることを一層強く理解し、一層深く苦悩するのです。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

画家・永瀬宗彦の雑記帳です。

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