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■内陸部の地震による津波の発生について補足的な考察

 2013年2月25日の栃木県北部の地震(M6.3/深さ3KM/最大震度5強)が発生した後、気象庁が「この地震による津波の心配はない」と発表した。「内陸部を震源とした今回の地震が、津波を発生させるはずがない」と訝る声が、インターネットを中心にして上がった。しかし専門家の解説によれば、内陸型の地震でも震源となる断層が海域にまで達していれば津波の可能性もあるため、気象庁は敢えて発表したのではないか、とのことだった。また、東日本大震災の津波被害が記憶に新しいため、少々サービス過剰と言われようが強い地震の発生後に津波の発生を打ち消しておくことは一つの気遣いだったのかもしれない。
一方で、津波の波源は必ずしも地震を代表とする断層の活動だけに限らない点も忘れてはならない。また、海だけでなく湖でも起こり得ることも忘れてはならない。その意味では、今回の震源が中禅寺湖に近かったことが印象的である。ただ、気象庁が中禅寺湖での津波を想定していたかといえば、恐らくそこまでは想定していなかったのではないかと思う。今回筆を取ったのは、その想定外を埋めることで、内陸部を震源とした地震でも、津波についての警戒を怠るべきではないと警告するためである。
さて、(1)波源が断層活動に限らない点、および(2)湖でも津波が起こり得る点、について象徴的な2つの災害をあげてみたい。

(1)津波の波源は地震に限らない(リツヤ湾の大津波
リツヤ湾史上最大の遡上高を記録する津波は1958年7月9日に発生したアメリカ・アラスカ・リツヤ湾の大津波である。この津波の直接的な原因は地震ではなく、現地で発生したM7.7の地震の後に誘発された山体崩壊である。もともとフィヨルドで山の落差が大きかったこともあり、山体崩壊によって大量の土砂と氷塊が勢いよくリツヤ湾になだれ込んだ。その衝撃によって遡上高524mにもおよぶ大津波を発生したのである。僻地のため居住地は無かったが、たまたま漁をしていた漁船が津波に襲われて2名の人命が奪われている。




(2)湖でも津波が起こり得る(バイオントダム災害
バイオントダム1963年10月9日イタリア・バイオントダム(現在閉鎖)では急激な放水による地質変化の影響で大規模な地滑りが発生した。この結果、最大遡上高250m、ダムの天端を100mも超える大津波がダム湖に発生した。ダム湖周囲の部落の一部が津波に流された他、5,000万㎥もの水が溢水して下流の部落を呑み込んだ。この災害によって2,000人前後の人命が失われたとされている。








これらの過去の災害から、今回の栃木県北部地震を念頭にして次のようなシナリオが描ける。
栃木県北部の地震(M6.3)が中禅寺湖周囲の山々で山体崩壊を誘発する。その土砂が勢いよく湖になだれ込む。湖に大津波が発生する。湖面の船舶および湖岸で被害を発生させる。津波が下流に押し寄せ華厳の滝を落下する。土石流が発生し下流域に甚大な被害を及ぼす。
もしこういったシナリオの可能性が現実に想定できるのであれば、内陸型の強い地震後に発せられる「津波の発生は無い」というアナウンスには、海での津波と共に、震源域の周囲の大きな湖やダム湖における津波を警戒するという意味も帯びていることを、ぜひ思い出して頂きたいのである。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

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