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■鶴見線と京浜工業地帯(3)

次の列車が来るまで30分近くあり、時間をつぶさなければならない。そこで国道の反対側へ向かった。駅の高架下の数十メートルのスペースを抜けて線路づたいに進むと、視界の先にコンクリートの堤防が見えた。急勾配の堤防の階段を登るといっきに視界が開けた。
そこは鶴見川の河口付近だった。右手になる川下はぐんぐんと川幅を増していて、水が流れている様子はなく、海と一体化しているようだった。そしてその水面は、太陽光を反射してまぶしいほど輝いていた。川は緑がかった水色で、川底は見えなかったが少しだけ透明度があった。しかし魚は見えず、泳ぐものといえば浮遊する細かいゴミだけだった。河岸には小さな船が無数に停泊していて、先ほどの貸し船屋の船着場もあった。ここから釣り場へ漕ぎ出すのだろうが、日曜の昼に船があるということは、客足が途絶えているということだろう。
遠くを眺めながら何も考えずに佇んでいると、何かブツブツ言いながら老人が近づいてきた。すると彼は予想通りわたしに話掛けて来て、同じ事を繰り返しながら延々と続けだした。わたしは不機嫌そうな顔をしながら、階段を下りて老人を振り払った。すると老人は直ぐに近くにいた別の男性に大声で話し掛けだしていた。「89?あぁ89になったんだ!」

駅へ戻ろうとすると、民家の軒下に茶色く汚れたダルメシアンがいた。彼は無愛想に寝そべって、暑そうに舌を出していた。日が高くなった。まもなく正午のようだった。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

画家・永瀬宗彦の雑記帳です。

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