■喋喋
気がつくと僕はイモムシになって草むらの中にいた。イモムシになる前はほかの何かだったけどまったく思い出せなかった。しばらくのあいだ周りの草むらを見上げていると、草と草のあいだから僕と同じ姿をしたイモムシが這い出てきた。
「やあ」
彼は親しげに言った。
「いつだい。君は」
僕は彼の質問の意味が分からなかった。あっけに取られて黙っていると、彼は言い直してくれた。
「そのさ、サナギになるのはいつ?」
「いや、その分からないんだ」
「そうなんだ。早く君の母さんに訊いた方がいいよ。その日までに若草をいっぱい食べておかなきゃならないからね」
「よく知らなくって」
ほんとうに僕はなにも知らなかった。
「ほら、そこにやわらかそうな葉っぱがある。君、食べたらどうだい」
彼は頭の上の小ぶりの草花を見ながらそう言った。僕がそちらを見上げてみると、空にはヒラヒラする白いものが飛んでいた。
「あれは僕の父さんだだよ」
彼が言った。白いものは空からの光をやわらかく反射しながら草むらの向こうへ行ってしまった。僕はさっきの葉っぱがむしょうに食べたくなってクキをよじ登った。
「じゃあね」
彼はそう言ってモゾモゾと草むらの中へ消えていった。
「やあ」
彼は親しげに言った。
「いつだい。君は」
僕は彼の質問の意味が分からなかった。あっけに取られて黙っていると、彼は言い直してくれた。
「そのさ、サナギになるのはいつ?」
「いや、その分からないんだ」
「そうなんだ。早く君の母さんに訊いた方がいいよ。その日までに若草をいっぱい食べておかなきゃならないからね」
「よく知らなくって」
ほんとうに僕はなにも知らなかった。
「ほら、そこにやわらかそうな葉っぱがある。君、食べたらどうだい」
彼は頭の上の小ぶりの草花を見ながらそう言った。僕がそちらを見上げてみると、空にはヒラヒラする白いものが飛んでいた。
「あれは僕の父さんだだよ」
彼が言った。白いものは空からの光をやわらかく反射しながら草むらの向こうへ行ってしまった。僕はさっきの葉っぱがむしょうに食べたくなってクキをよじ登った。
「じゃあね」
彼はそう言ってモゾモゾと草むらの中へ消えていった。
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