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■喋喋3

何日かあとに、また僕は自分の身体が今までと違ってゆくのが分かった。かたいカラの身体がやぶれて羽根が生えたのが分かった。いろいろなことを考えるようになった。

そして力をこめると、自分の身体が空へ浮き上がった。さっきまでいた草むらが見る見るまに小さくなっていった。僕は花から花へ飛びうつって蜜を吸った。

あるとき、隣の花から声がした。

「やあ、君かい?無事だったんだね」

声は変わっていたが、この前の彼に違いなかった。彼もちょうちょになって花の蜜を吸っていた。

「誰とだい君は」僕はまた彼の質問の意味が分からなかった。「えっと」僕がまごついていると彼は言い直した。

「そのさ、君の恋人はだれ?」

その言葉で初めて、僕はさっきから感じていたこの切ない気持ちの意味が分かった。

「いや、まだいないんだ」
「そうなんだ。君はいい女の子のちょうちょに出会えていないんだね。でも早く探さなきゃだめだよ」
「そうなの?よく分からなくて」
「ほらあそこの花にやさしそうな女の子がいる。声をかけてみたら?」

彼は少しはなれた花を見ながらそう言った。
僕もそちらを見ると、花の中にはかわいい女の子のちょうちょがいた。

「あの子は君にお似合いだよ」彼が言った。

女の子のちょうちょは、空からの光をいっぱいに羽根に浴びて、輝いて見えた。僕は切ない気持ちが大きくなって、しらないうちに彼女のほうへ飛び立っていた。

「じゃあね」彼はそう言って花の中に消えていった。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

画家・永瀬宗彦の雑記帳です。

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