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■喋喋4

何日かあとに、僕が好きになった彼女の身体が今までと違っていくのが分かった。彼女は身体を重たそうにして、ときどき苦しんだ。でも僕は何をしたらいいか分からなかった。

「彼ならどうしたらいいか知っているかもしれない」

僕はそう思って探したけれど、空き地に彼はいなかった。となりの空き地にいるのだろうか。

僕は今までとなりの空き地へは行ったことはなかった。行くには大きな道路を飛び越えなければならないし、道路にはとまれる草はひとつもなくて、ギラギラ光る自動車が見たこともない速さで走っていた。それに僕はそんなに高く飛べないから、人間の子供につかまるかもしれなかった。

でも僕は思い切って飛んでみた。

自動車が右から左から向かってきて、僕は風にあおられてクルクル回った。方向が分からなくなって行ったり来たりした。だんだん目の前がかすんできたけれど、その先に黄色い菜の花が咲いているのが見えた。僕はその花をめがけて力をふりしぼった。

ようやく着いたとなりの空き地はすごく広かった。僕はこの中に彼がいるかどうか自信がなくなった。

「でもねぇ、この原っぱにはたくさんのちょうちょがいるからね」

他のちょうちょに聞いたみたけれど、彼がどこにいるか分からなかった。僕がとなりのひろい空き地を一周するころには、あたりは夕暮れになっていた。僕がもとの菜の花にとまって休んでいる時、となりの菜の花から声がした。

「やあ、君かい?あの子とはうまくいった?」

彼の声だった。彼は菜の花から身を乗り出してこっちを向いた。そして僕より早く質問した。

「いつだい、彼女・・」
「苦しんでるんだ」僕は遮る様に言った。
「そうか、じゃあ今日にでも産まれるよ」

そのとき初めて、僕は自分の不安な気持ちの意味が分かった。
「早く帰って見守ってあげることだよ」
「ありがとう」

道路の車はさっきよりも多くなっていた。でも僕は力がみなぎって、彼女のいる家へ迷いなく飛び立った。

「じゃあね」彼はそう言って佇んでいた。



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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

画家・永瀬宗彦の雑記帳です。

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