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■鶴見線と京浜工業地帯(7)

駅構内の猫はみな人慣れていた。警戒感は無く、撫ぜるとまぶしそうな顔をして寝転がった。ところが、その中で一匹だけは少し様子が違った。私が改札口に近づくと、歩調に合わせてついて来た。止まると猫も止まった。引き返すとその場で座り込んだ。

私は駅舎の軒下へ移動した。別の猫が餌を食べるのを写真に収めようとしたのだ。すると、カメラマニア然としたお兄さんが私に話しかけてきた。彼は黒い革のジーンズを履いていた。

「あっちに子猫がいますよ。」「改札の向こう側ですよ。」
「へー、ありがとうございます。」

親切だなと思った。土地勘がない分、人に話しかけやすい観光地のような感覚だ。

私は、餌をつまんでだらしなく寝そべるオス猫の写真を撮ったあと、改札口を出てみた。すると右手のゴミ捨て場に、子猫が数匹寄り添って寝ていた。何匹かは起きていて、ミャーミャーと鳴いていた。たどたどしい足取りで兄弟を踏ん付けたり、発泡スチロールの箱の上にジャンプしたりしていた。衛生状態が悪く、子猫たちは目ヤニをためて、小蝿がたかっていた。すると、さっき私についてきた猫が、その発泡スチロールの箱の上にあがって、子猫たちを見下ろす場所に座った。なるほど、この猫はこの子達の母親なのだ、さっき私について来たのは警戒していたのだ、と気づいた。子猫たちは母親が来ると俄然はしゃいで、浅い眠りから目を覚ます子もいた。母猫は子供達のおねだりを意に介さない様子で、誇らしげにそこに寝そべった。

駅の外は、これまでとも様子が違った。工業・倉庫地帯というよりは、大規模プラント地帯のようで、ひとつひとつの敷地が広くて茫漠としていた。木々はほとんど無くなり、コンクリートの隙間からようやく草が生えている程度だった。広い割には周囲に人気は無く、まるで砂漠にいるような感覚になった。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

画家・永瀬宗彦の雑記帳です。

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