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■鶴見線と京浜工業地帯(9)

私は鶴見に直行する列車に揺られながら、途中下車した駅や、海の風景を眺めなおした。コンクリートの灰色を基調とした工業地帯は、緑と融和してことのほか美しかった。

実は世の中の大部分は裏方で、表舞台の上というのはその中のほんの一部に過ぎない。煌びやかな装飾品ですら、貨物船に乗って運ばれてくる間は暗渠の中でひっそりと眠っていて、一瞬の出番を長い裏舞台で待っているのだ。

工場やプラント群はそれらの裏方の一つだが、一方でそれは莫大な力を注いだ野心の塊でもある。その大きさ、むき出しの目的、自然を切り裂く形態は、見るものを圧倒する。

そして、今回訪問した京浜工業地帯は、そういった自我がほどよく削れて丸くなり、自然に馴染んでいた。ギラギラした眼光は穏やかに見守る眼差しに、切っ先鋭い刃物は子供を撫ぜる手に、草一つ生えなかった土地は、いつしか森になっていた。だからこそ、猫の親子は並居る機械群とすっかり共存しているように見えたのだ。

鶴見駅に着くと土曜の夕方の駅は、週末で上気した人で賑わっていた。さっきまでの鶴見線沿線の静けさが嘘のようだった。お土産も何も無かったが、私は迷いも無くまた行こうと思った。

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永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

Author:永瀬宗彦 - Nagase Munehiko

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